ベケットの散文の秘密を分析できたら素晴らしいぞ。

午後はM君との「ベケット読書会」を楽しみました。今日も『モロイ』をフランス語で読み進めました。フランス語という言語は、まさしく「明晰でないものはフランス語ではない」という主張に貫かれている一つの制度です。その言語をベケットは奇妙にねじ曲げているような印象を読んでいて感じます。一つ一つの文はフランス語的なのに、全体としてはフランス語的でない方向へと迷い込んでいくようです。言わば先へ先へと突っ走ろうとするフランス語に、無理やりブレーキを掛けて「減速」を強いているような雰囲気なのですね。ベケットの散文の秘密を納得の行くように分析できたら、ベケット研究者の最高の幸福ではないでしょうか。