『主語を抹殺した男 評伝三上章』(講談社)

金谷武洋著『主語を抹殺した男 評伝三上章』(講談社)を読了しました。
モントリオール日本語教育に携わる著者は、三上文法の研究者でもあります。カナダの学生諸君に「日本語がわかります」という文を文法的に説明することができずに悩んでいた若き日の著者は、日本の友人から贈られた三上章の『象は鼻が長い』を読んで驚いたそうです。日本語の文法的説明に「主語」はいらないと喝破していたからです。この出会いで三上章に「私淑する」こととなった著者が、「街の言語学者」三上の精神の遍歴を見事に謎解きしていく筆致は何ともスリリングで、私も読んでいて一種の高揚感を感じました。
金谷氏には『日本語に主語はいらない』(講談社選書メチエ)、『英語にも主語はなかった』(講談社選書メチエ)、『日本語文法の謎を解く』(ちくま新書)などの著書もあります。