今朝は『虞美人草』を読了しました。

takuzemi2007-07-09

先日から夏目漱石の全作品を読んでみようと思い立ちました。中学、高校生の頃に良く読んでいた記憶があるのですが、気が付いたら未読の作品もいくつも有ります。今朝は『虞美人草』を読了しました。登場人物は大学を同期で出た三人の青年、外交官志望の宗近君、哲学者の甲野君、そして文学者の小野さんです。そして女性軍は甲野の異母妹の藤尾、宗近の妹の糸子、小野の恩師の娘の小夜子です。小野さんは小夜子という恩師の娘が有りながら、「書斎」や「博士論文」や「金時計」に繋がる高慢な美女・藤尾と結婚しようと画策します。その小野さんを宗近君が諌める論理はなるほど「勧善懲悪的」です。文体も時代錯誤とも言えるほどの「美文調」です。けれどもこの小説を漱石は大変な決心で書いているのです。「死ぬか生きるか、命のやりとりをするような維新の志士のごときはげしい精神で文学をやってみたい」(角川文庫解説p.408.)と語っているのですね。自己中心的なヒロインの藤尾を殺すために書いたのだとも漱石自身が解説している作品です。宗近君、甲野君、小野さん、宗近君の妹の糸子、甲野の腹違いの妹の藤尾、そして恩師の娘の小夜子のキャラクターを押えてしまえば読みにくい本ではありません。むしろストーリーの展開はスリリングなアップテンポです。私はわくわく、どきどきしながら一気に読了してしまいました。