『糖質ゼロの食事術』と『主食を抜けば糖尿病は良くなる! 実践編』を読み比べました。

takuzemi2008-02-24

久し振りに釜池豊秋先生のブログ「理事長の食事日誌」を覗いてみたら、京都の高雄病院理事長・江部康二先生の最新刊『主食を抜けば糖尿病は良くなる! 実践編』(東洋経済新報社)の紹介文がありました。さっそく駅前の本屋さんで買ってきて釜池先生の『糖質ゼロの食事術』(実業の日本社)と読み比べてみました。
糖質制限食の創始者・釜池先生の『糖質ゼロの食事術』はラディカルな原理主義に貫かれています。「糖質は摂らない。食事は一日一回、夜だけにする」は反糖質主義宣言とでも呼べるものでしょう。人類の主食(ニッチ)を骨髄だと推理しながら、穀物の摂取を文明論的に読み取ります。インスリンの働き(悪行)についても分かりやすい理論的な解説を加えています。ホテルの朝食会場でブラックコーヒーを前にして「彼らは、どうして朝食をとっているのだろう?」とつぶやく釜池先生の姿に「孤立を恐れてはいけない」(p.202)という徹底主義の実例を見ることができます。
一方の江部先生の『主食を抜けば糖尿病は良くなる! 実践編』の方は大勢の患者さんの普通の人間としての「弱さ」までをも考えに入れた、良い意味での「折衷主義」の方法に思われました。糖質制限食を「スタンダード糖質制限食」、「スーパー糖質制限食」、「プチ糖質制限食」の分けているのも、患者さんの多様性に合わせて、多様なメニューを用意するという提供者の側の気配りなのでしょう。読者の方でも「これなら私にもできる」と思うこと請け合いです。私はいい加減な人間ですので、しょっちゅう「御法度」の糖質を摂取してしまいます。釜池豊秋先生の理想主義と江部先生の現実主義のあいだを揺れ動いているというのが私の現状です。