千種キムラ・スティーブン著『『三四郎』の世界(漱石を読む)』(翰林書房)を読了しました。

takuzemi2007-05-16

著者はロンドン留学中に初めて漱石の『三四郎』を読んだと言います。後書きを引用させていただきます。「文化のちがいにふりまわされる三四郎に同情しつつも、あまりの己惚れぶりに、笑いがとまらなかった。知性豊かな美禰子のさわやかさも印象的で、愛する野々宮と結婚できなかったのが気の毒でならなかった。」・・・その後、ニュージーランドの大学で教え始めた時に大変なショックを受けたと著者は続けます。「様々な解説書、研究論文を読んだところ、三四郎が悲劇の主人公のように論じられ、美禰子も三四郎を愛していたという読みばかりだったからだ。」・・・これは少し話が違うぞと感じた著者は『三四郎』の新たな読解に挑戦していきました。第1章は「喜劇としての『三四郎』」と題されています。まさしく見事な「脱構築」の試みに成功していると思います。学生諸君もぜひ図書館で借りて読んでみてください。