『憂い顔の『星の王子さま』』を読了しました。

加藤晴久著『憂い顔の『星の王子さま』』(書肆心水)を読了しました。ラディカルな書物です。本の帯紙には「良い翻訳とは先ず第一に正しい翻訳であること。『星の王子さま』を真摯に愛する読者のために、「定番」内藤濯訳と、新訳14点を具体的に検証。問題箇所を理解して、あなたの『王子さま』を笑顔に変えるガイドブック。」とあります。とりわけ内藤訳の問題点をブロックごとに取り上げて、その不適切さを容赦なく暴いていく著者の手さばきは素晴らしくスリリングで、何よりもテクストに密着した解読の論理に裏付けられています。恐れ入りました。内藤訳について著者は次のように語っています。「わたしは怒っているのである。こんな翻訳を50年間にわたってコドモたちに読ませてきた責任は誰が、どうとるのか。(この一文は原文では太字です。)」(p.251.)また、三田誠広訳(講談社 青い鳥文庫)については「このような欠陥商品を回収廃棄処分せずに、子ども向け文庫の一冊として売り続けるとしたら、作者への冒涜であり、読者への背信である。出版社の責任が問われることになるだろう。」とまで断言しています。恐るべき書物です。