「その”詩”を読んではならない。狩りたてろ。」

takuzemi2007-06-11

川又千秋著『幻詩狩り』(創元SF文庫)を読了しました。帯紙の「その”詩”を読んではならない。狩りたてろ。」という惹句に惹かれて一昨日買ったばかりの本です。シュルレアリスムの帝王アンドレ・ブルトンの前に現れた若き天才詩人フー・メイ。彼の遺した「幻詩」は読むものを魔界にいざなうという恐るべき作品だったというお話です。小説における「嘘」というテーマからも興味深い作品です。1984年に書かれたという「古さ」をまったく感じさせません。一気に読み上げてしまいました。まさしく言葉の「反在性」(川又さんの用語)をとことんまで追い詰めるのに成功しています。私は「で、それから?」と、もっともっとお話を聞きたがる子どものような気分で読了してしまいました。読んでいる間にずっと気がかりで堪らなかったのは、「結末をどう着けるのだろう?」ということでした。意外などんでん返しに「まいった!」と声を上げてしまいました。著者は「(シュルレアリスム運動の)親玉格とされるアンドレ・ブルトンの尊大さに、いささかの反感を覚えていた。そこで、そんなブルトンに、寒いパリのカフェで待ちぼうけを食わせてやろうという密かな企みが、実は、前期場面に込められているのである。」(pp.263.-264.)と書いています。あとがきのこの言葉にもにんまりしました。(^_^;