森田芳光監督の映画『それから』を見ました。

昨夜は夏目漱石原作、森田芳光監督の映画『それから』を駅のビデオ屋さんで借りてきて見ました。(手持ちのビデオは巻きが悪くなって映らなくなってしまいましたので。)何度も見ているのですが、松田優作の演じる代助が素晴らしい。中村嘉葎雄の演じる兄・誠吾も笠智衆の演じる父・長井得も雰囲気が出ている。投げやりで鬱屈しっぱなしの小林薫の平岡もいい。けれども藤谷美和子の三千代は個人的には「なんだかなあ」と思ってしまいます。ネット上の映画評を見てみると藤谷の演技を絶賛している方がいるのですが、私はこれはやはりミスキャストではないかと思います。せめて日本語をきちんと喋れる女優さんに演じて欲しかったと思ってしまいます。(森田監督の演出だとしたら監督の責任ですが。)以上は飽くまでも私の個人的な意見で、「藤谷美和子は素晴らしい」と見る見方ももちろんあると思います。
森田監督の映像は実に見事で、随所に色彩の戯れが工夫されています。端正な構図と意表を突く仕掛けとが微妙に混ぜ合わされているのも見所の一つです。この『それから』も漱石の他の多くの作品と同様に「不完全終止」で、本当の結末が見えぬままに終わります。(現在、マスコミを騒がせている羽賀健二が書生の門野の役で出演しているのも一興です。)