坂口曜子著『躓きとしての文学』を読み上げました。

坂口曜子著『躓きとしての文学』(河出書房新社)を会議の合間を縫うようにして読み上げました。漱石の『明暗』を論じた研究書です。帯には「夏目漱石は、小説の細部を飾る「物」や「言葉」に徹底した「象徴的意味」を持たせていた。その意味を解読しないかぎり、漱石の小説は理解できない。全く新しい漱石の読み方!」とあります。1989年4月に初版の出た作品ですが、今読んでも全く新しい作品として読むことができます。「この小説は、まるで連句のように、シンボルとしてのさまざまなイメージが次々と連鎖している」(p.71.)との著者の指摘にも、うなづかされました。主人公・津田の覚醒への旅を「則天去私」を実現するプロセスとして捉えている点も説得力がありました。こうして先達のガイドブックのおかげで『明暗』が大変に面白く読めるものですから、細部を赤ペンでチェックしながら再読することにしました。熊倉千之著『漱石のたくらみ』も併せて再読しようと思っています。冬休みの楽しみがそこまで来ています。