アラゴンと漱石の共通点はなんだろう?

私が専攻しているアラゴン漱石との共通点について考えてみました。新しい作品と取り組むたびに前作とは違う試みを企むというのが漱石にもアラゴンにも共通する傾向です。一度試みたこととは違う新しい何かを試してみたいという気持ちが強いのです。川喜田二郎の「創造性の3原則」というものがあります。「モデルがないこと、自発的であること、切実であること」の3点を満たしているほど、仕事が創造的になると言うのですね。40歳ほどで亡くなった漱石さんと80過ぎまで長生きしたアラゴンさんを比べるのは無理があるかも知れません。でも、二人とも「誰もやったことのない、未踏の仕事をなし遂げたい」という気持ちを執筆の仕事に持ち続けていたということは事実だと思います。漱石展で見た『道草』の原稿は鬼気せまるものがありました。上手く書けない原稿にいらだった漱石が、怒りを叩きつけるように原稿用紙にインクを叩きつけているのですね。そうしたテンションを自己の内部に育み続けた作家たちなのだと思います。