ハンドアウト作成は難行苦行の連続でしたね。

今年度の「文学」では重点的に夏目漱石を語るという決心で講義に取り組みました。そのためにはハンドアウトを全て新作で提供しなければなりません。新しいデータを仕込むために随分と沢山の本にも目を通しました。何しろ相手が日本近代文学の最高峰の文豪ですので、読まねばならぬ資料もそれこそキリがありません。そんな資料の中から面白いものを要約してハンドアウトに転用するという作業が続いたのですが、正直言って難行苦行の連続でした。週末から(研究日でお休みの)月曜日に掛けては連日、スキャナーやキーボードに向かう日々で、他の仕事にまでなかなか手が回らない状態が続きました。春学期の授業が終わりを向かえるこの頃になって、ようやく私なりの漱石像がおぼろげながら浮かんできたような気もします。漱石の書簡集の中の次のような言葉が印象に残っています。「牛になる事はどうしても必要です。(中略)うんうん死ぬまで押すのです。それだけです。(中略)何を押すかと聞くなら申します。人間を押すのです。」(大正5年8月24日書簡 『漱石書簡集』岩波文庫より)