4年のゼミではHさんの発表がありました。

午後の4限は「フランス語5」の授業です。O君と『星の王子さま』を読み進めました。今日は王子とキツネとの象徴的な対話が続く重要な部分です。「大切なものは目に見えない」という有名な言葉が出てきます。サンテグジュペリのテクストの磨き抜かれた宝石のようなレトリックを楽しみました。
5限の4年のゼミではHさんの発表がありました。題して「時間に対する意識の違いはなぜ生まれるか」です。せっかちな日本の社会とのんびりしたイタリアやスペインの社会を較べて、「生活のテンポ」を比較してみようという発表です。ロバート・レヴィーン著/忠平美幸訳『あなたはどれだけ待てますか』(草思社)からのデータも引例して裏付けも固めました。
個人主義文化と集団主義文化では、個人主義文化の方が生活のテンポが速い。個人主義文化は、協力関係よりも業績を重視する傾向があり、業績重視はたいてい「時は金なり」的な考え方につながる。したがって、個人主義の度合がより高い国は、より速いテンポと密接な関係があるといえる」という指摘には興味を引かれました。
時間意識と言えば、夏目漱石も汽車に乗せられて同じ方向に連れ去られていく近代人を、近代化の病弊のイメージとして『草枕』の中で描いています。自分の意志と関係ないままに動かされている近代人の現状を、漱石はすでにして気づいていたのでした。気が付いたら私も何だかこのところ、せっかちで、立ち止まりのんびりすることを忘れていたような思いになりました。