松田優作と藤谷美和子が代助と三千代を演じています。

最初に水村美苗さんの論文「「男と男」と「男と女」−藤尾の死」の内容を紹介する形で『虞美人草』の読解の一例を展開してみました。『虞美人草』のテクストの中に異質な複数の種類の異なった文が混在していることを分析した大変に面白い論文です。藤尾の「悪」は漱石の美文によって捏造されたものであると水村さんは主張します。逆に小野さんの出てくる部分では「俗な文」によって小説が造形されていくと言います。甲野さんと宗近君の会話も基本的には俗な文から構成されています。
次に宮井一郎氏の『夏目漱石の恋』を紹介して、『永日小品』の中の小品「心」を配布して読んでみました。宮井氏の主張する漱石の恋人の「原イメージ」を説明してから、DVDで『それから』の一部分を見てみました。松田優作藤谷美和子が代助と三千代を演じています。筒井ともみさんが「アナーキーでイノセントだ」と評した藤谷の演技がなかなかのものです。
残りの時間で松下浩幸さんの「『三四郎』論−「独身者」共同体と「読書」のテクノロジー−」と題された論文の内容を紹介しながら、本郷文化圏の男たちが美禰子を始めとする女性たちを「読解の対象」として構成していくプロセスを考えてみました。・・・猛暑の中を参加してくださった受講生のみなさんには感謝感激です。