真藤順丈さんの『地図男』を一気に読了しました。

真藤順丈さんの『地図男』(メディアファクトリー)を一気に読了しました。一貫して物語を紡ぐことへの意志に貫かれた作品だと感じました。小さな断片的な物語の非連続な連なりからなる作品ですが、終始して一種の強度に貫かれていて、全体としての統一感は見事に保たれています。関東の地図帳に物語を書き込みながら漂泊する「地図男」と、それを目撃する役割を担わされた「俺」との間には師弟の関係にも似た「友愛」の存在までかいま見られます。「俺」はやがて「地図男が物語を紡いで止まないのはなんのためなのか?」という根源的な問いに導かれていきます。ムサシとアキルのせつない恋物語の挿話にもかかわらず、意外なまでにあっけらかんとした結末にも、にんまりと納得させられました。・・・強調しておきたいのは、ほとんど獰猛な動物みたいな文体のリズム感です。一度このリズムのうねりに乗ってしまった読者は、地図男の地図を追いかけながら最後のページまで駆け続けるしかありません。どうやら地図男とは血まみれになりながら物語を紡ぎ続ける人間の隠喩にほかならないのでしょう。