俵万智さんのエッセーを読んでみました。

3年ゼミ生のT君が「きのこ」と題された俵万智さんのエッセーのコピーを持ってきました。教職関係の授業で教案を作って発表するのでアドバイスして欲しいと言うのです。文中には二つの短歌と一つの詩が引用されています。孫引きになりますが引用させていただきます。

しめぢ茸栗茸むらさきしめぢ茸木の葉のつきしままに並(な)めたる−−斎藤茂吉−−

山から採ってきたキノコが木の葉のついたまま並べられている様子を単純素朴に描いて楽しい作品になっています。音が何とも面白いですね。
二句目は・・・

ねずみいろのきのこらの茎白く並び死のつつしみに似たるひそけさ−−斎藤史−−

こちらはちょっと不気味なイメージですね。「ねずみいろの」「白く」「死の」「つつしみに」とモノクロームで無彩色のイメージの言葉が並びました。三つ目の引用は短歌ではなく詩の引用でした。・・・

この紅茸(べにたけ)のうつくしさ/子供がたべて毒なもの/なぜ神様は付くったろ。/毒なものならなんでまあ/こんなにきれいにつくったろ。−−竹久夢二−−

禁じられたものへの憧れを歌う不思議な感覚の短詩です。前の歌のモノクロームの感覚に鮮紅色の毒キノコをぶつけていく俵さんの展開のお手並みも大変なものだと思いました。頭の中の引き出しから自在にこの三つの歌を取り出して並べて料理するのは並の腕前ではありませんね。(原文は俵万智『旬のスケッチブック』所収)