「漱石のリアル」を読んでみました。

午後の3限と4限は空き時間となっているのですが、会議のための資料作成の仕事を入れなければなりません。(このところ空き時間を見つけては大量のコピーを取っています。)自分の時間資産が刻々とすり減っていくように感じることも時にあります。
5限の3年生のゼミでは『ちくま評論選』から若林幹夫氏の「漱石のリアル 測量としての文学」を読んでみました。漱石の『こころ』を「家郷」と「東京」の二つの極を対立軸として読み解こうという試みです。叔父に裏切られた「先生」は「家郷」と決別するために家産を金銭に換えて「東京」に出てきたのでした。それは「先生」が共同体や家に縛られない近代的な個人となったことを意味するのですが、同時にハイデッガーの言う「不気味さ」−自分が存在している理由も目的も意味も分からずに、居心地の悪い状態(p.153.脚注)−に捕らわれることになったことも意味します。私自身、10年前に生まれた土地を離れて現在の住居に移り住んでから地縁や血縁からほとんど乖離したような生活を送っています。この若林氏の分析は他人事とも思われません。大変に面白い論文でした。
夜は大学時代の友人たちと再開しました。パリから帰ったばかりの「風船」ことI君の旅の話しを聞きました。何ともうらやましい話しばかりでした。

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