信じる者は救われるという時代にはもう戻れません。

昨夜(11月9日)放映されたNHK教育テレビのETV特集【「悩む力」政治学者・姜尚中が読む夏目漱石】をハードディスク録画で見てみました。すでに何度も学生諸君と見ている画像です。けれども何度見ても面白く感じます。現代に生きる近代人の寄る辺のなさを例えば「三四郎」は見事に体現していると思えるのですね。
閑話休題。92歳になる家人の母の実家は本郷で東大生相手の学生下宿を営んでいました。家人の母も「耶蘇信じる者は誰もみな救われる」などと教会で歌を歌っていたらしいのですね。『三四郎』の美禰子も教会に通っていたが、信じる者は救われるという時代にはもう戻れません。個と個がばらばらに生きていくポストモダンの現在を「どう生きるか?」が大切です。若いゼミ生の諸君も苛酷な世界を生きています。(「キリスト教」と言えば、漱石の『吾輩は猫である』の中には苦沙弥先生が奥さんに英語の知識を要求して、奥さんに嫌がられる場面があります。(「そんなに英語が御好きなら、何故耶蘇学校の卒業生かなんかをお貰いなさらなかったんです。あなた位冷酷な人はありはしない。」)(以下略)新潮文庫p.78.