『リトルターン』『ロストターン』の二冊を読みました。

ブルック・ニューマン著、五木寛之訳『リトルターン』『ロストターン』(集英社)の二冊を読みました。学生のIさんが貸してくれた本です。『リトルターン』では、ある日、突然飛べなくなったリトルターン(こあじさし)の喪失の日々が語られます。五木さんは後書きに「思うに二十世紀は高く飛ぼうとする時代だった。いまは逆に飛べなくなって呆然としている鳥たちの時代だ。」(p.93.)と記しています。もう一冊の『ロストターン』でも嵐に巻き込まれて遠い世界に投げ出されホームを喪失した鳥の物語が語られます。老いた漁師との出会いを通じて鳥は新たな世界を見つけていきます。五木さんの後書きでは「かつてデラシネ状況を自らのアイデンティティーと考えた私にとって、この一羽の鳥の深い喪失感には一種の郷愁さえおぼえずにはいられない。ロスト感覚の喪失(ロスト)こそが、いま世代を超えた現実なのだから。」(p.110.)と記されています。ゆっくりと時間を掛けて読みたい本でした。
5限の4年ゼミは近況報告会としました。新しく建てられたばかりの12号館の教室は大型のスクリーンが活用できます。ゼミ生の諸君の進行中のノートやアウトラインを教材提示機で映写しながら「途中経過」を互いに見せあいつつ切磋琢磨するというコンセプトです。先輩の書いた卒論なども提示して目次や注のつけ方を確認しました。