「われらの畑を耕さねばならない」

午後の3限の「ヨーロッパの文学」は先ず人間科学部の学生さんのアンケートを実施する作業から始まりました。卒業論文に使うためのデータを集めたいという希望です。15分ほどでアンケートを済ませてから、ヴォルテールとルソーという対照的な二人の思想家についての話しを提示機でスクリーンにレジュメを映写しながら話しました。文明の進歩を楽天的に肯定していたヴォルテールと文明の進歩が人間を堕落させると信じていたルソーとでは話しがかみ合うはずはありませんね。けれども二人とも旧体制に対する大きな疑問符を打ち上げたという点では共通しています。つまり大革命の源流としての二人の思想家なのですね。二人の作品の中で私のおすすめは先ずはヴォルテールの『カンディード』ですね。無垢な純粋さというものは、それだけでは笑劇にしかならないと作者は優しく語っています。「われらの畑を耕さねばならない」という結末の文句も秀逸です。・・・ルソーの作品ではやはり『エミール』は必読でしょう。賛否両論はあると思いますが、ルソーがここまで「純粋」を素材として思考実験を試みたのには驚きます。作品中に散りばめられている名言の数々に傍線を引きながら読んで楽しむのも一つの読み方です。