『日本語が亡びるとき』を興味深く読了しました。

takuzemi2008-12-25

朝は起き抜けから読書の時間を持ちました。ネット上でも論争の種となっている水村美苗さんの『日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で』(筑摩書房)を興味深く読了しました。第1章ではアメリカのアイオワ大学が主催するIWP(国際創作プログラム)に参加をして、さまざまな国のさまざまな作家たちが、さまざまな言語で作品を書いているという現実に目覚めた体験が語られます。しかも、マイナーな言語で書いている作家たちの作品が英語に翻訳され、多くの読者を獲得するチャンスはほとんどないとも語られます。
第2章ではパリのあるシンポジウムで水村さんがフランス語で講演した内容が再録されています。英語という「普遍語」の圧倒的な優位と、他の言語の相対的な地位の低下とが語られます。「英語の世界と非・英語の世界とのあいだにある非対称的関係」への言及は、フランス語の現状に関心を持っている私にも大いに興味のある部分でした。最終章の「英語教育と日本語教育」の部分がやはりさまざまな異論を呼び寄せるのではないでしょうか。「日本近代文学」を唯一の規範として国語教育を押し進めるべきだという水村さんの主張には、時代とともに国語も変化するという事実認識が欠けているような印象も受けました。