「文学」のためのハンドアウトを作りました。

takuzemi2009-06-29

午前中は自宅の居間で木曜日の「文学」のためのハンドアウトを作りました。漱石の『道草』をテーマに授業を進める予定です。熊倉千之著『漱石の変身』(筑摩書房)の中で紹介されている御住と健三との「出産競争」という読解もぜひ紹介したいと思っています。作品中に現れる健三の養父の島田の存在も不気味なリアリティーがあります。ここから漱石自身の養父母のもとでの生活を学生諸君に想像してもらうのも面白いかも知れません。
人の住んでいない大きな四角い家のイメージや、健三が釣り上げて怯える大きな緋鯉のイメージにはハイデッガーの言う「不気味なもの」との接近遭遇が書き込まれているような気がします。
文体も変わっています。「通勤した」と書かずに「千駄木から追分へ出る通りを日に二辺ずつ規則のように往来した」と書いてあります。いわゆる「異化」の効果を狙っているのでしょうか。「健三は家の周辺を散歩するのが日課となっている」などと誤読する人も出そうです。「採点する」も「赤い印気で汚ない半紙をなすくる業」と表現されているのだから大変です。