村上たかし著『星守る犬』を読みました。

食卓の上に、息子が一冊の本を置き忘れていきました。どうやらマンガの本です。書店のカバーを外して表紙を見たら、一面のヒマワリ畑の真ん中で、つぶらな瞳をした犬がこちらを見ています。何とも無邪気そうな犬の瞳に惹かれて、無断借用して読んでみることにしました。村上たかし著『星守る犬』(双葉社)です。
小さな女の子の「みくちゃん」に拾われて、「おとうさん」と「おかあさん」の家で育てられることになった犬の「ハッピー」の視点から物語は語られます。平凡な一家にもやがて何年かの月日が流れ、「おとうさん」の生活にも変化が訪れます。病を得て、職を失った「おとうさん」は、ついには「おかあさん」から離婚を迫られます。
マンションを売り払って、ローンの残りを支払った「おとうさん」は「ハッピー」と車で南に向かって旅に出るのですね。「おとうさん」と「ハッピー」との旅先での心の交流が淡々とした筆致で描かれていて感動的です。
星守る犬」の「守る」とは「じっと見続けている」という意味で、「決して手に入らない星を物欲しげにずっと眺めている犬のこと」だそうです。慣用句で「高望みをしている人のこと」を指すとも書かれています。私たちも恐らくは「星守る犬」なのですね。限りなく切なくて、暖かな一冊でした。(「漫画アクション」の以下のサイトから、第1章を見ることができます。)

http://webaction.jp/title/104.php