徒刑囚が出てくる部分を精読して楽しみました。

takuzemi2009-11-04

寒い朝になりました。厚手の背広を選んで家を出ました。昨夜は未明に眼が醒めてしまい、いささか睡眠不足です。越谷へと向かう武蔵野線の車中では窓外の景色を眺めて芒洋としました。
1限は相棒のFさんとの「ランボー読書会」を楽しみました。『地獄の季節』の中の「悪い血」を精読しています。今日読んだテクストはヴィクトール・ユゴーの『レ・ミゼラブル』に出てくるジャン・バルジャンを思わせるような徒刑囚が出てくる部分です。「まだほんの子供だったころ」(宇佐美斎訳)の語り手は、この徒刑囚に対する強烈な憧憬の念感じていたことを力を込めて語るのです。「彼は聖人にもまさる強い力を持ち、旅人をもしのぐ良識をそなえていた」(宇佐美訳)と言うのですね。
この徒刑囚の声らしきものが語り手の耳に聞こえてきます。「弱かろうが、強かろうが、とにかくおまえはそこにいる、それが力なのだ。」(宇佐美訳)・・・これは、どうしても「父」の声のように聞こえます。現実の父というよりも「ありえたかも知れない父」の教えのように聞こえるのですね。この部分のテクストにはランボーの十八番の韜晦が見られません。少年ランボーが素直に徒刑囚への思いを語り切ってしまっているように思われます。Fさんと「この部分は学生諸君にテクストを読ませても面白そうだね」と話し合いました。楽しい90分でした。