携帯電話に着信があったので驚きました。

論文を読んでいたら、携帯電話に着信があったので驚きました。ほとんどメールの専用機として使っていて、電話として使うことは滅多にありません。出てみたら「ヨーロッパの文学」を受講しているI君でした。腰を痛めてしまったとのことで、下宿で寝ているので、今日のレポートの〆切に間に合わないと言うのですね。I君は小学校教員の免許取得を目指していて、私の講義も最前列で熱心に聴いてくれる真面目な学生です。レポートは慌てずに提出するように言っておきました。
I君は5限に予定されている教職関係のオリエンテーションにも出なければならない様子です。文教大学の教職関係のオリエンテーションは厳格なものです。病欠が認められるものかどうか、教育支援課の職員のNさんに問い合わせに行ってみました。

卒論の査読を続けました。Sさんの卒論「山本文緒論」は、この女性作家の『ブルーもしくはブルー』『ハムスター』『ブラック・ティー』の3作品を精読しようというものです。『ブルーもしくはブルー』は蒼子Aと蒼子Bという「本体」と「ドッペルゲンガー」が戦う物語だということです。アラゴンの『死刑執行』も一人物の内面が二重に分裂するという物語なので、そんな連想もしながら楽しく読ませていただきました。Sさんは『ハムスター』には「優等生的な生き方の喪失」と「執着心の喪失」が読み取れるとしています。「45点でいいや」という若い世代の感性なのでしょうか。山本文緒の作品にはオープンエンド(完結していない物語の結末)が多いという指摘も面白いものに思われました。読者に解釈を投げかける結末なのですね。(出津橋から見下ろしたら、鴨の群れが楽しげに泳いでいました。元荒川は自然の宝庫です。)