「漢文訓読」も、これは立派な日本の文化だと思います。

 日曜日はすっかり怠け癖が付いてしまいました。外出しようという気分になりません。コンピュータを使って作業をしたり、好きな本を散漫に読んだりしているうちに時間が過ぎていきます。
 福島泰樹さんの『完本 中也断唱』(思潮社)をぱらぱらと捲りながら、気に入った歌を拾い読みして楽しみました。ハードカバーの『中也断唱』と『続 中也断唱』の2冊がこのソフトカバーの1冊にまとめられて、何とも読みやすくなりました。お気に入りの歌をゆっくりと音読してみると、吉祥寺の曼陀羅での福島さんの絶叫の姿が甦ります。「どのようなテクストもさまざまな引用のモザイクとして形成され、もうひとつ別なテクストの吸引と変形にほかならない」とはJ・クリステヴァの言葉です。福島さんも中也の言葉を見事に吸収・変形して、中也に憑依することに成功しています。
 週末の夕方には昨日・今日と「石川忠久の漢詩紀行100選」のDVDを楽しみました。1枚のDVDを見るのに1時間ほど掛かります。時間のたっぷりある日でないと観られません。(せかせかした気分の日に観ても漢詩の気分は訪れてくれませんし。・・・)
 中国語が分かって原音の美しさを聞き取ることができれば最高なのでしょう。けれども漢文を日本語の文法に従って、訓点を付けて読む「漢文訓読」も、これは立派な日本の文化だと思います。江守徹さんの朗読も至芸とでも呼ぶべき完成度です。耳から朗読を聴いているだけで、漢詩の世界が頭の中に浮かび上がってくるのです。