アラゴンの詩篇を読んでみたいと思うようになってきました。

 篠沢秀夫先生の『フランス文学精読ゼミ』(白水社)や『篠沢フランス文学講義』(大修館)を読み進めるうちに、アラゴン詩篇を読んでみたいと思うようになってきました。詩集『未刊の物語』の冒頭の詩「ポン・ヌフの橋で私は会った」などはアラゴンの青春との訣別が悲痛な調子で語られている傑作です。パトリス・ルコントの映画『列車に乗った男』でもこの詩集が絶妙な小道具として使われていました。確かに詩の中に斬新な手法を次々と投入してきたアラゴンです。詩の改革者としての一面はしっかりと押さえておく必要があります。しかし、アラゴンの中にはフランス詩の古き伝統にしっかりと根を降ろした部分もあるのですね。そのあたりの伝統的価値の部分を読み直してみたいという思いが、篠沢先生の本を読んで触発された点なのですね。
 夏目漱石の『こころ』を市川崑監督が映画化したDVDを持っています。1955年の制作ですから、半世紀以上も前の作品なのですね。私はそれでもこの映画を割合と気に入っています。今日は体調も優れないので夕方には映画を見て過ごすことにしました。キャストは「先生」が森雅之、「奥さん(静)」が新珠三千代、「K」が三橋達也、そして「私」が安井昌二というものです。(若いみなさんにとっては知らない名前が並んでいることと思います。)
 今回観て感じたのは市川崑監督の『こころ』の解釈が小森陽一さんや石原千秋さんの解釈である「私」と「奥さん」との「共生」を仄めかすような読みに近いものになってはいないかという印象でした。楽しく観ました。