ウィルソンの言う「原罪」という言葉を思い出します。

 それにしても朝から大変な激しい風雨でした。ほとんど叩きつけるような雨と風でした。昼のテレビのニュースを見てみたら、交通網にもかなりの被害が出ているようです。同僚の先生方も湘南への移動が大変だったのではないでしょうか。
 風邪気味に花粉症も併発して家に閉じこもっていると、コリン・ウィルソンの言う「原罪」という言葉を思い出します。キリスト教で言う「原罪」とは異なった意味でウィルソンはこの言葉を用いています。人間が自らの意識を十全に広げきることができない状態をウィルソンは「原罪」という言葉で描いているのですね。
 夏目漱石の中期・後期の作品群もウィルソンが読んだら「原罪を巡る作品だね」と言いそうな気がします。『こころ』の先生、『彼岸過迄』の須永、『行人』の一郎といった主人公たちはみな「内へ内へととぐろを巻く」ように内向していきます。言わば「意識の狭さ」を非常に激しく生きてしまっているのです。その意味で、この主人公たちはそれぞれに一つの典型の領域にまで達しているとも思われます。
 ところで、そんな典型としての原罪の人にもなれず、さりとて「意識の拡大」も思うにまかせぬ私は今日は一日、本当に低空飛行の時間を過ごしてしまいました。