熊倉千之先生の「文学セミナー」に参加しました。

 夜は目白の和敬塾に移動しました。目白駅前から新宿西口行きのバスに乗って、目白台3丁目で下車しました。和敬塾は作家の村上春樹さんが早稲田の学生時代に入塾していたことでも有名な学生寮です。(『ノルウェイの森』の舞台にもなっています。)構内は鬱蒼とした樹々に覆われています。
 熊倉千之先生の「文学セミナー」は学生食堂の2階の3番教室で行われました。参加者は総勢10名ほどの内輪の会です。筑摩書房から『漱石のたくらみ』や『漱石の変身』などの著書を出している熊倉先生は独特の構造的な読みで漱石作品の分析を続けています。
 今夜は漱石の『三四郎』を素材に、参加者のみなさんの発言も交えて、読みの作業が進められました。参考資料は先生からいただいたExcelのシートです。新聞掲載時の書き出しの部分には1回から117回までのナンバーが打ってあります。『三四郎』の章立ての構成を構造的に読もうという意図です。
 和敬塾スタッフのSさんは「初めて読んだときには三四郎が周りの人物たちを動かすための狂言回しのように取れた」と言います。ところが再読してみたら「三四郎はなかなか好い男だと読めた」と言います。国語教員のIさんからは「三四郎にとっての<三つの世界>のうちの「田舎」はもはやない、古い世界はもはやない」との読みが提出されました。都会で浮遊する未来しか残されていないという読みですね。・・・「作品のクライマックスはどこに在ると読むか?」という先生の問いに対してもさまざまな意見が出されました。楽しい夜でした。(写真は別所沼の風景です。)