いがらしみきお『I(アイ)』(小学館)とタイトルにあります。

takuzemi2012-06-04

 我が家の居間の食卓の上に漫画本が一冊置いてありました。先日家に遊びにきた娘が置いていったのかも知れません。いがらしみきお『I(アイ)』(小学館)とタイトルにあります。手に取って読み始めて驚きました。主人公のイサオが母親の股間から産み落とされる場面から始まるのです。その母親は便所の前で死んでいるところをイサオの叔父に発見されます。天涯孤独となったイサオは酒乱の叔父から虐待されながら、豚小屋の隣の物置で育ちます。
 そのイサオの同級生に医者の息子の鹿野雅彦という少年がいます。人生の意味が分からずに悩んでいる少年です。雅彦はしだいにイサオが不思議な能力を持っていることに気付いていくのです。そして雅彦は高校入試の日にイサオとともに放浪の旅に出る決心をするのです。旅の目的はイサオが生誕の日にかいま見た神のような存在=トモイを探すことです。「トモイはオラが生まれだ時に見だものさ。生まれだ家の庭の木の陰さいだんだ。小っちぇす暗くてよぐわがんねがったげっとも−−金色に光って笑ってだ。そいづ見たらオラうれすくてなぁ。神様だど思った」とイサオは言います。
 不思議なリアリティーが有って、イサオと雅彦の二人が織りなす物語の世界にぐいぐいと引き込まれてしまいました。二人の放浪の旅がどのように続いていくのか、どのような結末を迎えるのか全く見当も付きません。それでもこの一冊は生と死についての深い思いを伝えるくれる傑作です。(『I(アイ)』の冒頭の部分をただで見られる「IKKI COMIX 試し読み!!」は以下のURLです。ぜひご覧になってください。)

http://www.ikki-para.com/tameshi/i/index.html