「山本君、勉強しているかい?」と声を掛けるのが常でした。

takuzemi2012-07-18

 非常勤講師として高尾の拓殖大学まで通っていた若い頃のことです。講師室でご一緒する非常勤講師仲間の一人にMKさんという人がいました。MKさんは東北大学の工学部建築科を卒業して、早稲田大学文学部の大学院に入ったという変わり者でした。早稲田大学の学生が勉強をしないという批判的な言葉を良く口にしていたのを思い出します。
 講師室で私の顔を見ると「山本君、勉強しているかい?」と声を掛けるのが常でした。私に取っては相当なプレッシャーを感じる一言ですよね。
MKさんはその当時高額だったノートパソコンのThink Pad 220も講師室まで持ってきていました。そしてフロッピーディスクを同僚の教員の前にぽんと投げ出して「この中にへーゲルの『精神現象学』が入っているんだぜ」と言うのです。ニヒルな感じの語り口が存在感を感じさせる人でした。
 拓殖大学のLLを取り仕切っている部門に迷惑を掛けたこともあると聞いています。ギリシャ語を学びたくなったMK先生は勝手に業者を呼んでギリシャ語のカセットテープを注文してしまったと言うのですね。ワンセットで50万円ほどの買い物だという噂も聞きました。この事件では専任のU先生が怒り狂っていたことを記憶しています。MK先生とご一緒していた時期には同じ非常勤のNN先生もいました。拓殖大学の教員食堂でお喋りを楽しみながら昼食をご一緒したことを思い出します。拓大のキャンパスは空気も澄み切って居心地が良かったことを思い出します。