「マルモのおきて」でもお馴染みの阿部サダヲさんの表情が素敵でした。

 文教大学を卒業して筑波大学の大学院で心理学を学んでいるTさんが昼休みに私の研究室に現れました。3限の文学の授業の最初の時間にアンケートを実施する予定です。アンケートの量がかなりの部数になるので、Tさんはキャリアバッグを引いています。13101大教室まで二人で移動しました。集まっていた学生諸君に手分けしてアンケートを配布しました。チャイムが鳴ってからTさんにアンケートの趣旨を説明してもらいました。
 15分ほどでアンケートを回収してから、『彼岸過迄』のお話しをしました。短編を積み重ねる形式を取っている作品です。ところが短編相互の間に整合性が欠けているという印象を受けます。第一話の「風呂の後」では三人称の主人公のように語られていた田川敬太郎は後の「須永の話」では一人称で語る須永市蔵に主人公の地位を奪われてしまうのですね。佐藤泉氏は「『彼岸過迄』は、全体としての統一感を欠いた、はなはだしく、まとまりの悪い作品になっている。そして、このこわれっぷりのよさが全く漱石的なのだ」と評しています。
 授業の最後の15分ほどを利用して『ユメ十夜』の第六夜を観てみました。監督・脚本が松尾スズキさん、主役の「私」が阿部サダヲさん、運慶役がTOZAWAさんです。「マルモのおきて」でもお馴染みの阿部サダヲさんの表情が素敵でした。特筆すべきは運慶役のTOZAWAさんの迫力満点のアニメーションダンスです。今日はこの映画を観られただけでも楽しい一日でした。