何しろ風まかせでしょう。人間には根っこがありませんもの。

takuzemi2012-07-21

 昨日の3年生のゼミでは『星の王子さま』の18章に出てくる「花びらが三枚ついた、どうということもない花」の言葉に関してゼミ生の諸君に考えてもらったのでした。王子が「人間にはどこに行ったらあえますか?」と尋ねると、花は「人間ですか? たぶん、六人か七人はいるでしょうね。何年かまえに見かけましたよ。でも、どこにいるのかなんて知りません。何しろ風まかせでしょう。人間には根っこがありませんもの。それで人間はずいぶん、苦労しているんですよ」と答えるのです。(この部分の訳文は野崎歓先生の『ちいさな王子』(光文社古典新訳文庫)のものを利用させていただきました。)
 マンガの上手なY君の書いてくれた文章に面白いものがありました。「自分はまだ根無し草だ。けれども、いつかはタンポポの綿毛の実のようにどこかに飛んでいくことだろう。そして自分に適した土地を見つけて、そこにしっかりと根を張ることだろう」と言うのですね。なかなか良い言葉だと感心しました。
 3・11の大震災以後の日本は羅針盤も海図もなしに嵐の夜の海をただよっている一隻の船のように思える時もあります。若い人々もなかなか「根を張っている」という安心感を抱くことができない人が少なくないのではないでしょうか。そんな中で確かな「根」を育てていくためには自分の考えを言葉にして定着していくという地道な作業が必要なんだろうと考えます。昨日のゼミのテクストに出てきた言葉を使うなら、自らが「ユマニスト」になることが必要なんですね。