宮崎駿監督を一度だけお見掛けしたことがあります。

 有名な宮崎駿監督を一度だけお見掛けしたことがあります。花見の季節のことでした。所沢に東川という川が流れています。川沿いには真っ直ぐな道が一本あります。この道が桜並木になっているのですね。桜並木の存在を発見したばかりのころで、娘、息子、家人、私と連れ立って一家四人で桜見物に出掛けたのです。
 プロペ通りから東川沿いの道に入って一家でお喋りを楽しみながら歩いていました。そのうちに娘と家人とは歩くのが遅くて後続部隊となりました。息子と私とは歩くのが早くて先発部隊ですか。息子とお喋りをしながら歩いていたら、目の前にテレビで何度も見たことのある髭を生やしたお顔が現れたのです。隣に並んだ女性とにこやかにお喋りを楽しみながら通り過ぎていきました。息子に「今見たか?」と声を掛けると「うん。見た見た。宮崎駿さんだよね」と言います。
 後続部隊の女性軍にも「見たか?」と聞いてみました。二人とも何のことか見当もつかないという様子です。宮崎さんと一緒に歩いていた女性は奥様ではなく、ジブリのアニメーションの色彩設計を担当していた保田道世さんではなかったかと推測しています。
 素晴らしい桜並木をたっぷりと満喫してから、家族で一部屋を確保できる和風のお店に立ち寄りました。屋号は忘れてしまいましたが、奥まった風情の古い建物でした。ここで夕食をいただいて、またまた家族でお喋りを楽しみました。女性軍が悔しがっていたことは言うまでもありません。