「まだまだ「秋の歌」どころじゃないな」と呟いてしまいました。

takuzemi2012-09-09

 朝の起き抜けに家人が「ずいぶん涼しくなったわ」と呟きました。そのひと言で昨日土曜日の朝日新聞の「be」に高橋睦郎さんのコラム「季をひろう」があったのを思い出しました。「be」を広げてみると高橋さんは「秋の訪れを感得するとは、言い換えれば夏の終りを確認すること」だと書き記しています。そして「その事情をみごとに捉えた詩」としてシャルル・ボードレールの『悪の華』の中の一篇「秋の歌」を斎藤磯男先生の訳で全文引用しているのです。
 「やがて冷たき闇のなかにわれら沈まむ、/さらば、束の間のわれらが夏の強き光よ」と始まる詩です。なんだか背筋がぞくぞくと寒くなるような詩ですね。高橋さんはコラムの締め括りに赤黄男(かきお)の一句「石の上(え)に秋の鬼ゐて火を焚けり」を紹介して「作者の赤黄男はボードレールの「秋の歌」を読んでいるのではないか」と締め括っています。
 日曜日の午前中は読書を楽しんだり、論文の原稿を読み直したりして過ごしました。600字ほどの原稿の断片も書き足しました。まだまだ論文の全体の構造がくっきりした輪郭を浮かび上がらせてこないのです。〆切まで3週間ほどしかないので完成するかどうか心配です。・・・昼前には気分転換を兼ねて駅前の須原屋書店まで出掛けました。外は猛烈なかんかん照りの陽気になっていました。「まだまだ「秋の歌」どころじゃないな」と呟いてしまいました。