二つの夢の共通点はどちらも「帰れない夢」だったのです。

takuzemi2012-09-22

 未明にはベランダの樋を流れる激しい水の音で目が醒めました。外では強い雨が降っているのです。まだ眠り足らないという思いがあって、再び布団の中に入り直しました。ところが、余り嬉しくない夢を二本立てで見てしまいました。
 一本目の夢では私は知人の別荘に出掛けています。別荘を出て山道を散策しに出掛けたのですが、どこかで道に迷ったらしいことに気づきました。元来た道を辿ろうとするのですが、来た筈の道がどちらなのか判然としません。夢の中で途方に暮れてしまいました。まるで冥界巡りのような雰囲気の夢でした。
 二本目の夢は京都が舞台です。もっとも夢の中なので現実の京都は大きく歪曲されています。私は下宿している松ヶ崎に帰らなければならないのです。そこで一台のバスに乗りました。そのバスが何とも変なのです。寺院の境内に乗り入ってしまうだけでなく、寺院の建物の中までもバスで突っ走ってしまうのです。お寺の中の光景がバスの車窓から流れるように過ぎ去っていきます。けれどもこのバスは私を松ヶ崎の下宿まで送ってはくれませんでした。
 夢の途中で朝が来て目覚ましが鳴ってしまったからです。目が醒めてからも二つの夢の細部をリアルに覚えていました。そして二つの夢に共通点があることにも気づきました。どちらも「帰れない夢」だったのです。私も故郷を捨てて、都会に移り住んだ人間です。どこかで「帰れないことの痛み」が私の心の深部に巣食っているのかも知れないと思いました。「帰ることの可能性あるいは不可能性」をテーマに文学作品を読み直してみたら面白いかも知れません。