『イタリア人と日本人、どっちがバカ?』を読みました。

 数日前にイタリア出身で在日歴20年のファブリツィオ・グラッセッリさんが書いた『イタリア人と日本人、どっちがバカ?』(文春新書)を読みました。物語風に56歳の技術者マッシモ・ビアンキさんとその家族、あるいは一族の人々のさまざまなエピソードを通じてイタリアの病根が分かりやすく描かれています。大変に楽しい本に仕上がっているのですね。
 イタリアの経済は北と南とで大きく異なります。北イタリアは豊かで、EUの中でも抜群の生産性を有している。ところが南イタリアは非常に貧しくて、北イタリアの足を引っ張っているのですね。南イタリアにはいくつもの闇社会の存在も有ります。そして、役人の不正がいたるところに見られること、脱税がいたるところにはびこっていることなどがイタリアの国力にダメージを与えていると語られます。
 著者のグラッセッリさんはバブル経済の崩壊後に日本人が失ったものはお金だけではないと警告します。「むしろ、お金より大切なものを、皆が失ってしまったのではないでしょうか」と言います。それが何なのかは本書を手に取って読んでいただければ良いでしょう。マッシモ・ビアンキさんという面白い登場人物を立てて、物語り形式でイタリアを描いたので大変に分かりやすい読み物になりました。現代の二本を映し出す鏡としても読める一冊です。中年男のビアンキさんもその奥様も大変にチャーミングに描かれていました。(写真は狭山市駅からの秩父連山の眺めです。たまには生まれ育った町に戻るのも良いものです。)