中学校と高校の同級生にススム君という少年がいました。

takuzemi2013-03-22

 中学校と高校の同級生にススム君という少年がいました。中学時代はスポーツ万能で野球部のエースを務めていました。スポーツが得意でない私はススム君を一種畏敬の念を込めて見つめていたものでした。ススム君の自宅に遊びに行ったことがありました。そうしたら、「ここがおれの部屋だよ」と敷地の中に建てられたプレハブの家を指し示すのでした。「この部屋で好きなだけクラシックを聴くんだよ」と自慢げに言うのが何とも羨ましかったことを記憶しています。そのススム君が川越高校に進学すると同時に意外な方向へと転身したのです。何と彼はマキノ先生が指導する男声コーラス部に入部したのです。川越高校は男子校ですから混声コーラスはあり得ません。男声コーラスは当時からハーモニーの良さとアンサンブルの良さで有名でした。
 高校で育んだ音楽の知識を生かそうと考えたのでしょうか。東京の有名大学を卒業したススム君は神楽坂にある音楽の友社に入社しました。有名な指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンにインタヴューしたりと活躍していたことを思い出します。一度だけ西武線の電車の中でススム君に出会ったことがありました。弁当箱ほどの大きな黒いウォークマンを持っています。「これは音質が良くってね。これでクラシックを聴きながら通勤するんだ」と言いました。残念なことはススム君が何度も開催された中学校の同窓会に一度も出て来ないことです。昔話に花を咲かせたいと思うこともあるのですが。