BGMは本を探すのには無用の長物です。

 中野京子さんの『印象派で「近代」を読む』にはエドガー・ドガの『カフェにて』がカラーで掲載されています。画面に向かって左側の女性はアブサンを飲み、向かって右側の男性はマザグラン・コーヒーを飲んでいます。確かランボーの『イリュミナシオン』にも、このコーヒーが出てきたような記憶があります。気に掛かるので調べてみることにしました。『イリュミナシオン』の冒頭の「大洪水のあと」にマザグラン・コーヒーが出てくるのですね。「ビーバーたちが巣を築いた。「マザグラン・コーヒー」が、小さなカフェで湯気を立てた。」とあります。さらに訳者の宇佐美斉先生が脚注に次のように書き記しています。「「マザグラン・コーヒー」 大きなグラスで水を加えて飲む冷たいコーヒー。一八四〇年のアルジェリア戦役におけるマザグランの戦いにちなんだ名前。」とあります。何となく納得したので、しばらく『イリュミナシオン』を拾い読みして過ごしました。
 ジュンク堂書店が大宮の高島屋の7階に新規開店したと聞いたので、出掛けてみることにしました。1時過ぎの各駅停車で大宮に移動しました。エスカレーターで高島屋の7階に上がってみると、確かにジュンク堂がありました。東口のLOFTにあった頃はBGMは流れていなかったと記憶しているのですが、この新しい店ではポップス系のBGMが流れています。BGMは本を探すのには無用の長物です。少しばかりむかつきました。サドの作品を読み直してみたいと思っていたのですが、残念ながら文庫本では見当たりませんでした。唯一の収穫は中野京子著『「怖い絵」で人間を読む』(NHK出版生活人新書)です。これも西洋近代絵画を学ぶための良い一冊になってくれそうです。(写真は大宮駅構内の雑踏の様子です。いつ来ても「混雑しているなあ」と感じます。)