「嗣治からの手紙」と題された作品です。画家藤田嗣治が描いた戦争画を主題とする番組です。

 家人がぽつりと「明日はお母さんの命日だわ」と言いました。確かに仏壇の位牌を確認してみたら、平成9年の2月12日に母が亡くなっていることが分かりました。家人が命日や記念日などを良く覚えていることには常々驚かされていました。母の命日をすっかり忘れていた私は親不孝な息子なのかも知れないと反省させられました。それにしても明日で母が亡くなってから17年も経つのですね。時の流れの余りにも早いことに驚かされました。
 10時30分からはテレビ朝日を観ました。「嗣治(つぐはる)からの手紙」と題された作品です。画家藤田嗣治が描いた戦争画を主題とする番組です。最初は暗い画面の絵が多いなという印象を受けました。けれども軍部が藤田の作品をリアル過ぎて戦意高揚には繋がらないとしたことを聞いて気が変わりました。「アッツ島玉砕」「ハルハ河畔の戦闘」などの戦争画は口を開けたまま死んでいく兵士たちの姿が精密に描かれています。「サイパン島同胞臣節を全うす」や「血戦ガダルカナル」にはぞっとするようなリアリティーが感じられました。日頃から「隠居にはなりたくない、消極的にはなりたくない」と口にしていた藤田は現役であることに常にこだわっていたのでしょう。藤田の絵の上手さは飛びっきりの代物だと感じました。番組を通じて暗い印象を受けたのですが、最期には何か祈りのようなものがあると感じられたことが一つの収穫だったと言えるでしょうか。(写真は狭山の移動美術館で観たパリで幸せに暮らしていた頃の藤田の裸婦像です。)