「文学」では13101大教室で夏目漱石の『それから』に付いて語りました。

takuzemi2014-05-09

 昨日3限の「文学」では13101大教室で夏目漱石の『それから』に付いて語りました。初期三部作と言われる『三四郎』『それから』『門』の中の一冊です。不幸な恋愛をテーマにした作品群の一冊です。三浦雅士さんの『漱石 母に愛されなかった子』(岩波新書)からの抜き書きを利用して、ハンドアウトを作らせてもらったのですが、著者の三浦さんも「『それから』はまったく神技とでも言うほかない作品です。不必要な細部が一箇所もない完璧な作品を見ていると、そう形容するほかない気がします。」と述べています。クライマックスの場面では三千代が「しょうがない、覚悟を決めましょう」と言います。つまり、平岡を捨て、代助を選ぶという決断の言葉ですね。この三千代の言葉を前にして代助は背中から水をかぶったように震えます。怖くなったのです。このことから二人の恋愛には三千代の方に圧倒的な存在感が有ることが分かりますね。以前、早稲田の大学院で、バルザックに付いての論文を読まされたことを思い出しました。Tout se tient.(全てが引き合っている。)と言うのですね。何しろ夏目漱石の作品群は伏線の張り方が見事です。第一章の末尾に主人公の代助が分厚いアルバムを取り上げて、三千代の写真をじっと眺めるという場面に、不幸な恋愛に展開するであろう予兆が書き込まれているのですね。「高等遊民」という言葉が夏目漱石の作品に何度も出てくることを説明して授業を終わりました。残り時間で森田芳光監督が映画化した『それから』のDVDを観ました。松田優作藤谷美和子が好演している作品です。