今朝は夏目漱石の二つのテクストに付いて考えてみました。『虞美人草』と『行人』です。

takuzemi2014-05-17

 今朝も4時過ぎに目が醒めてしまいました。頭の中が一種の興奮状態になっているのでしょうか。今朝は夏目漱石の二つのテクストに付いて考えてみました。『虞美人草』と『行人』です。『虞美人草』は朝日新聞の記者となった夏目漱石が最初に手掛けた作品で、漱石の意気込みが良くも悪くも読者に伝わって来る作品です。『虞美人草』と『行人』はヒロインである女性が二人とも「蛇」に擬せられるという点です。しかし、その両者には若干の違いが有ると思うのですね。『虞美人草』の方は藤尾が自ら口にする『娘道成寺』の清姫になぞらえるのですが、それは小野との駆け引きの上に成立しているのです。テクストの二人の会話をチェックすればそれは明らかになるでしょう。ところが『行人』の方はそうではない。「いつでも覚悟ができてるんですもの」と言うお直は本気なのです。そのお直を二郎は蛇のような得体の知れない存在と感じているのです。テクストを確認しようと思って青空文庫の『行人』をダウンロードして「蛇」で検索してみました。ところが、どうした訳か全くヒットしないのですね。そこで「蛇」を「青大将」に変えて検索してみたら無事に次のようなテクストが出てきました。二郎は兄嫁のお直のことを「彼女の事を考えると愉快であった。同時に不愉快であった。何だか柔らかい青大将に身体を絡まれるような心持ちもした。」と有ります。伊豆利彦さんが「『行人』論の前提」という論文で、「一郎を中心とした読解を脱構築すべきだ」と主張しています。そして、二郎とお直を中心に据えて、このテスクトを解釈し直せば「二郎はお直をたしかに愛していたのだ」と分かる筈なのです。