『夢十夜』は漱石自身の内側から見た生だと柄谷氏は喝破しています。

 10時42分の南船橋行きで移動を開始しました。幸い座席を確保できたので、ドミニック・ローホーさんの『「限りなく少なく」豊かに生きる』(講談社)を再読しました。ローホーさんは新たな形のモラリストだと言っても良いのでしょうか。人間を見つめるローホーさんの視点にはいつも深みが感じられるのです。
 文学の13回は柄谷行人氏の「内側から見た生」『増補 漱石論集成』(平凡社)から抜き書きしたハンドアウトを利用しました。『夢十夜』は漱石自身の内側から見た生だと柄谷氏は喝破しています。なかなか説明し難いテクストなのですが、「第四夜」「第五夜」「第十夜」は「死」のテーマで括れるということで説明しました。漱石の内部に自己縮小の怯えが有ったと言う柄谷氏の指摘も納得の行くものでした。ハンドアウトを読了してから、プロゾポペ、あるいは「死者語り」、大江健三郎の『取り替え子』、『虞美人草』に於ける高所と低所に付いて気楽なお喋りをしました。「ユメ十夜」のDVDを観て帰路は埼玉近代美術館に寄り道してMOA美術館展を観ました。ジョルジュ・ルオーの「横向きのピエロ」、パブロ・ピカソの「静物」、クロード・モネの「ジヴェルニーの積みわら、夕陽」などを楽しんで帰路に着きました。