乃木坂で下車すると国立新美術館はすぐ近くです。

 早めの昼食を済ませて、午後は快速新木場行きに乗って移動を開始しました。車中は混雑していて座れなかったのですが、戸田公園で座席を確保できました。車中ではいつもの『まんが 哲学入門』をしばらく読んで過ごしました。渋谷で下車して東京メトロに乗り表参道で乗り換えました。乃木坂で下車すると国立新美術館はすぐ近くです。千六百円のチケットを買って館内に入りました。第一室は「マネ、新しい絵画」と題されていて「草上の昼食」と「オランピア」が立て続けにパリにスキャンダルを巻き起こしたと記されていて、スキャンダル画家としてのマネの面目躍如だったろうと想像したものでした。エドワール・モネの「読書」はマネが1863年に結婚したシュザンヌを描いたもので、慎ましい笑顔が結婚の幸福を印象づけます。マネの名品「笛を吹く少年」は黒い帽子と黒いシャツを着た少年が赤いズボンをはいているのが強烈なコントラストを醸しているのが印象的でした。ジャン=フランソワ・ミレーの「晩鐘」は何度も複製で見ている筈なのですが、実物を見るとその深い宗教性に打たれて感動させられました。ギュスターヴ・カイユボットの「床に鉋をかける人々」は既視感を誘う絵でした。現実にどこかの美術館で見たことが有ったのかも知れません。第三室は「歴史画」と題されていました。アンリ・ポール・モットの「ベリスの婚約者」は大変に不思議な絵でした。場所は巨大な神殿とおぼしき空間です。巨大な神像が聳えています。その膝の上に金色の座布団を敷いた上に全裸の女性が座っているのです。髪は金髪で、向こうに六人ほどの人々が階段を昇っているのです。誰としてこの光景に関心を払っていないのが強烈な違和感を私に与えてくれたのでした。