岩佐倫太郎君の『印象派と琳派がわかれば絵画が分かる』(舵社)を何度も読み直しています。

takuzemi2014-08-01

 8月になりました。岩佐倫太郎君の『印象派琳派がわかれば絵画が分かる』(舵社)を何度も読み直しています。「美術体験は大げさにいうと、個人としてのよみがえりを図ることですから。僕は絵を見て個人が解放や癒しを得ることが、美的体験の価値ではないかと考えています。」(同書7ページ)そして「僕の持論では、存在の根源的な陽気さ、おかしみを内包しているのが、優れた芸術。深刻ぶるのはたいてい大したことはありません。」(同書62ページ)などの部分に大きな共感を覚えます。岩佐倫太郎君の本では「常設展」が重要なキーワードとなるようです。何度も見た経験が私たちの忘れられない作品となる筈です。ミレーの「春(ダフニスとクロエ)」やルノワールの「アルジェリア風のパリの女たち」そしてエドヴァルド・ムンクの「マドンナ」も必見の作品の一つに数えられるでしょう。それからアルファとオメガの夫婦の物語も捨てられません。私は岩佐倫太郎君が地味な作品ですが、カミーユピサロの「立ち話」を高く評価していることに大きな賛同の念を禁じ得ません。岩佐君の言葉を引用しましょう。「僕も、若いころなら凡庸な作品として取り合わなかったでしょう。と言うのは、ぎらついた芸術的野心や企てが全く見えなかったでしょう。ところが最近、ピサロが胸にしみて来るのです。この僕自身の径年変化、喜ぶべきか、悲しむべきか。進歩か退歩か。結論はすでに出ています。自分の絵の見方の変化を歓迎しています。年をとると絵の見方も変わる、それでいいのだと思っています。」(同書32ページ)岩佐君の本を片手に持って美術館を巡る旅はまだまだ続きそうです。