「ここに、一つの世界が幕を下ろし消え失せ、別の世界が生まれる」

 早めの昼食を済ませて午後は12時21分の快速新木場行きに乗って移動を開始しました。車中では怪人二十面相シリーズの江戸川乱歩の『魔法人形』(ポプラ社)を読みました。板橋で都営三田線の新板橋に移動しました。日比谷で降りて帝国劇場9階の出光美術館を訪問しました。今日から「宗像大社国宝展」が開催されているのです。玄界灘の但中に浮かぶ神体島、沖ノ島は太古より神が宿る島として人々から崇敬されていたと言われています。島の信仰が深まる中で女人禁制、禊、島での見聞の口外無用の禁忌も現れ、今も厳守されているそうです。階段を降りると馬具が有りました。対称形の模様が有り、そのバランスが美しさを作り出していました。「王纏御太刀附鮒形」は装飾を施された太刀でその美しさに驚かされました。金銅御麻笥(こんどうのおんおけ)銀銅御麻笥(ぎんどうのおんおけ)が並んでいます。いずれも燻が利いた作品で古来からの伝統を引き継ぐものと思われました。三十六歌仙の図が有り遠い昔の時代に還ったような気がしました。小野小町が一番淑やかに思われました。阿弥陀如来図は神々しいお顔で結跏趺坐を組んで座っています。お顔は微笑みを湛えているように見えました。石造狛犬の二対が向き合って座っていました。渋面を浮かべているのですが、何故かユーモラスに感じてしまいました。出光美術館と言えばジュルジュ・ルオーのコレクションで有名です。ルオーのコレクションの数々を味わって帰路に着きました。「受難」と題された作品が多いのですが、中に「ここに、一つの世界が幕を下ろし消え失せ、別の世界が生まれる」副題の付いた作品が有り、ルオーは世界の再生を祈っていたものと知れました。