最初に目に飛び込んで来るのは中学生時代の東山の自画像です。

 東山魁夷館を訪れて「青いライン」を鑑賞しました。最初に目に飛び込んで来るのは中学生時代の東山の自画像です。中学生の帽子を被った初々しい表情に驚かされました。旅の写生シリーズが「遠望」、「夏の日」、「薄暮」と続きます。青春の甘やかさを感じたものでした。「白馬の森」と言う作品が有りました。白い樹々で覆われた森の中に幻の馬が中央にいます。コメントに「心の奥にある森は誰も窺い知ることは出来ない。私の心の祈りを反映するような幻の馬がそこに在った。」と書かれていて軽いショックを受けたものでした。長野県信濃美術館に移動しました。不破章の作品が並んでいました。「農婦」、「外房の女」、「鶏舎」が並んでいます。いずれも農作業に従事する女性たちを描いた作品で、女性たちの強さが見る者に伝わってきて軽い感動を覚えたものでした。中村琢二の「伊那谷の春」は田植えをしている風景で、彼方には伊那の山々が雪を被ってくっきりと描かれています。美術館巡りを一段落付けてから善光寺を訪問しました。賽銭を上げて合掌しました。タクシーを呼んでホテル信濃路に帰りました。まだ夕食の時間までかなりの時間が有るので小林泰三(「やすみ」と読みます。)『大きな森の小さな密室』(創元推理文庫)を読みました。ギャグ漫画を彷彿させるような急速な展開を楽しみました。登場人物たちが意外なキャラクターで読者を楽しませてくれます。密室殺人の種明かしも加えると予想外の展開にあっけに取られてしまいます。
小林泰三さんは読者を裏切ることにかけては常習犯だと言ってもいいのでしょう。