「モラリストの伝統について〜サン・テグジュペリの『星の王子さま』を読む」と題してお話ししました。

takuzemi2014-10-29

 1限の多文化理解概「モラリストの伝統について〜サン・テグジュペリの『星の王子さま』を読む」と題してお話ししました。先ずはレオン・ヴェルトへの献辞の問題に付いて語りました。レオン・ヴェルトと言う名前は西欧の人間なら誰でもユダヤ人だとわかる名前なのです。そして作者であるサン・テグジュペリはレオン・ヴェルトの立場に立つと宣言しているのです。子どもが大人の世界を見て「何だか変だ」と感じるのが異化効果と呼ばれる現象だと説明しました。『吾輩は猫である』の主人公の名前のない猫の視点から人間の世界を眺めるのも同じ異化効果ですね。人間の顔に毛が生えていないことを猫はまるで薬缶だと表現しています。また王子さまがパイロットの生活を知り、パイロットも王子さまのことを知ると言う「知の獲得」と言うテーマが『星の王子さま』には有ることも説明しました。「知の獲得」は成長小説と言うテーマにも繫がります。3章から8章に至る「知の獲得」の具体例な流れを引例して検証しました。サン・テグジュペリの中には農耕的な円環的時間への憧憬の念が有ることもお話ししました。人間は「壊れもの」であると言うこともお話ししました。目に見えない精神的な価値と倫理性についても『星の王子さま』の21章から引例してお話ししました。ここでは王子とキツネの出会いが語られるのです。この章では「なつかせる」、「きづなをつくる」、「たいせつなものは目には見えない」あるいは「きみはきみのバラに責任があるんだよ」などの重要な言葉が次々に繰り出されてきます。11月28日に生涯学習センターで行われる「サン・テグジュペリの『星の王子さま』を考える」の良い予行演習になったようです。