3限の「ヨーロッパの文学」では『星の王子さま』に付いて講義しました。

 3限の「ヨーロッパの文学」では『星の王子さま』に付いて講義しました。先ずはレオン・ヴェルトへの献辞の問題から始めました。レオン・ヴェルトという名前はヨーロッパの人間ならすぐにもユダヤ人だと分かる名前なのだそうです。作者のサンテグジュペリも異邦人であるユダヤ人の立場に立つという宣言だとも取れますね。ベルト・ブレヒトが作った「異化効果」に付いても語りました。子供の眼で大人の世界を見ることで「大人の世界は何だか変だぞ・・・」と考えるのが「異化効果」なのですね。サンテグジュペリにおける「反近代」に付いても語りました。由緒のある貴族の家柄に生まれたサンテグジュペリブルジョワが大きな顔をして大道を闊歩し、金儲けが正当化される近代社会を嫌っていました。明治の日本の作家である夏目漱石も近代という時代の在り方に強い不安を表明していた一人です。漱石の作品には繰り返して汽車のイメージが出没します。ひとりひとり違う人間の個性を否定して、集団と化された大衆が同じ方向に運び去られるのが近代=汽車なのです。
 4限のフランス語6ではブラッドリー・ジョン君とルール・カロリーネさんと『星の王子さま』を原文で読みました。24章の後半の「心もち開いた王子の口元がかすかに笑みがうかんだので、ぼくはこうも思った。(ちいさな王子の寝顔が、こんなに胸を打つのは、この子がずっと花のことを思っているからなんだ。眠っていてさえ、この子のなかでは花の姿が、ランプの炎のように輝いているからなんだ。)そう思うと、王子がいっそうこわれやすいもののように思えた。ランプの炎はまもってやらなければならない。風のひと吹きで、消えてしまうかもしれないのだから。そうやって歩いていくうちに、明け方、ぼくは井戸を見つけた。と有り結末の付かないままテクストの読解は終わってしまいました。