『満足死 寝たきりゼロの思想』を読了しました。

フリージャーナリストの奥野修司さんの『満足死 寝たきりゼロの思想』(講談社現代新書)を読了しました。このところ「高齢化社会」の問題を考えようと色々の本を買い込んできています。この本もその中の一冊です。著者は一人の医師・疋田善平(ひきた・よしひら)さんの活動を伝えるためにこの本を書いています。「医長は五十歳で辞めるべし」と公言していた疋田医師は、五十歳で京都医療センターを退職し、以前からの関心事だった「予防医学」の実践に乗り出します。高知県佐賀町の無医村に住み着いたのです。「生涯一カルテ」という標語に要約されるように住民の健康台帳−(つまりデータベースですね)−を整備して一人一人の患者の生活史に密着した医療と健康指導を実践しようと大変なエネルギーで村の奥まで宅診に向かいます。「全村病院構想」です。それは在宅の医療と在宅のホスピスを可能にする試みでもあります。疋田医師の超人的な活動には驚きます。しかし、著者の奥野さんは疋田医師を手放しで賛嘆しているわけではありません。行政との連携が上手でない点など批判は批判として書き込んであり、こうした問題に興味のある読者に判断を投げかけてくる部分も好感が持てました。「満足死」とは何か?・・・それは読者の一人一人が考えるべき問題なのでしょう。