夏目漱石の『行人』を読み直しました。

空き時間を利用して夏目漱石の『行人』を読み直しました。冒頭の「友達」の章では二郎の友人の三沢の話が中心的な話題になります。次の「兄」の章では兄の一郎よりも、むしろ弟の二郎の心の動きが中心的な描写の対象となります。「帰ってから」以後と終章の「塵労」では、やっと一郎の心の解明が試みられるという大まかな流れです。ところで「帰ってから」と「塵労」の二つの章の間には、漱石胃潰瘍の悪化による5カ月の中断があるのですね。この間に漱石の当初の構想が変化してしまい、一郎を正当化するような結末部分(特に「塵労」の章の後半の「Hさんの手紙」)を生んだのではないかと何人もの評者が推理しています。私も「Hさんの手紙」に描かれている一郎が人格者だとは到底思えません。「二郎−お直」のラインからの読み直しの可能性が浮上する所以です。
さてさて、午後は今日も会議の連続となってしまいました。12時30分からは「文学部運営協議会」、午後の1時からは「学科会議」、そして午後の2時40分からは「教授会」です。学科の会議では来年度のロンドン研修についての検討案なども話し合われました。長い午後でした。
会議を終えて帰路に着きました。雨が降りだしそうなどんよりとした雲行きです。このところ元荒川の流れも水量が増えているような気がします。・・・気が付けば春学期の授業終了まで余すところ一カ月となっています。その前に乗り越えなければならないハードルもいくつも並んでいるのですが。・・・